日記

12月5日に何を見たかと言えば、女と男をみた。


女の方は校舎の入り口で、見た。
黒いサッカーのユニフォームを着て、ipodを首からぶら下げて音楽を聞きながら、
2回、側転をした女だ。それは誰かの視線を意識して、そうして見せたようでもなく、
音楽と、それに没頭している様子だった。だから僕が見ていた事に気づくと気まずそうに側転をやめ、走り出していった。


男の方は駅の階段で、見た。
それは白人の男で、赤い上着と赤いリュックを背負っていた。
上着の背中、それとリュックにそれぞれ白い文字で「CANADA」と書いてあった。
正確に言えば、背中に書かれた「CANADA」の文字はリュックに一部隠れていて、リュックに書かれた「CANADA」によって
それぞれが同じ「CANADA」であることが理解できた。なのでその男はカナダ人のように見えた。
けれどもなぜ「CANADA」なのか。それぞれ赤で統一された上着とリュックは、サッカーのサポーターなのかと思わせるが、
チーム名だとか、何かのスポーツを意味する文字はなくて、ただ「CANADA,CANADA」と2回繰り返されるだけなのだ。